蒼天のかけら  第八章  因果の獄


あの日のかけら


 暗い

 真っ暗だ

 そこにあるのは、紅くこぼれる光だけ



 お行きと言われた

 いやだ、いやだと泣いたのに、つかんでいた手をほどかれ、さあお行きとそれだけ言っていた

 どこへとは言われなかった

 だから、ここにいる

 ここなら誰かがきてくれるかもしれない

 いつもみたいに迎えにきてくれるかもしれない

 どこにも行けない。行きたくない

 まだ小さいから。みんなと同じようにはできなかったから

 走って、走って

 隠れて

 決して見つかってはいけない

 見つかったら終わり



 本当は知っている

 ここから逃げる道があることを

 でも、待っていたいから

 ずっと、ずっと。迎えに来てくれるまで待っていたいから

 だって一人じゃ、さみしいから



 後ろで小さくあの子が呼ぶ

 逃げようと。一緒に行こうと、あの子が言う

 ちゃんと道に開いてあげる。ちゃんと出られるように塞いであげる

 ぼくならできる

 泣かないで。怖がらないで

 さあ、行こう


 行こうよ、サキ――

Next  >>


Back  |  NovelTop  |  SiteTop
inserted by FC2 system