蒼天のかけら  第十一章  神籬の遺跡


彼とわたし


 ありがとうと伝えたら、いいんだよと笑う。

 いつもそう。

 彼はいつも気にしないでと言うの。

 泣いていたから心配したと言われて、ほのかな気持ちを抱く。

 他の人達は、皆して誤解している。彼は。本当の彼はこんなに素敵な人なのに。



 本当の彼を見てくれればいいのに。知ってもらえればいいのに。

 そう思って薦めても、彼は首を振る。

 あんまり言うと悲しそうだから、もう言えなくなってしまった。

 会うのはいつも二人きりになれる場所。

 他の人に見られたら、わたしが大変だからとせつないことを言う。

 そっと包みを渡された。

 包みを開けたら、たくさんのとんぼ玉が入っていた。

 気に入ってくれたらうれしいと笑う彼。



 ……ああ、本当に。何で皆は彼を理解しないのかしら。

 こんなに素敵な人なのに。

 少しでも、気持ちを伝えたくて。

 誰かに伝えたくてたまらない。



 だから聞くの。

 友達に分けてあげてもいいかしらって。

 彼はいつも頷いてくれる。

 もちろんだよって言ってくれる。



 明日にでも皆に分けてあげよう。口にはできないから。彼との約束だから。

 少なくとも彼の気持ちだけでも配ってあげよう。

 暗く、辛い顔をしている子達に、彼のやさしさを分けてあげよう。



 もう行くねと言われたから、お礼をもう一度伝える。

 この気持ち、もっともっと伝わればいい。

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